ポッド式電気推進船は従来船に対して、機関室を大幅に縮小できるため、この空いたスペースを利用して居住空間の確保や貨物艙の拡大が図られる等のメリットがある。従来の漁船は居住区画が狭く、労働環境、居住環境ともに劣悪であることが漁船漁業の後継者難の一因となっている。このため、ポッド式電気推進船になれば、居住環境が改善されて、若者の就労も期待できる。一方、電気推進の場合、発電機からモータ駆動までの動力の伝達効率が従来のディーゼル船に比べて約15%悪くなるというデメリットがあり、この克服がポッド式電気推進漁船採用の重要な要素となる。そこで、総トン数135トンのまき網漁船を対象として、それを電気推進船とした場合の性能評価をすることにした。従来の漁船船型に比較して抵抗低減を図るためにバトックフロー船尾船型とした。従来船型とバトックフロー船型の模型船を製作して抵抗計測を行った。また、ポッドの抵抗を推定するために形状が異なる10種のポッド模型を製作して、抵抗計測を実施した。以上の計測結果を基に、従来船型とポッド式電気推進船の抵抗を比較すると、船速によって異なるが、6〜10%の抵抗低減が得られた。自航要素を推定してプロペラ設計を行い、バトックフロー船型の推進性能を推定した。その結果、抵抗低減とプロペラ効率の向上により、従来船に比べて、14〜15%程度の性能向上が見込まれ、伝達効率の低下をほぼカバーできる見通しが得られた。一方、バトックフロー船尾船型は保針性が劣る、との懸念があるため、模型船を使った斜航試験とpure yawing試験を実施して、保針性能の検討を行った。試験は、従来船型と、バトックフロー船型にポッドをつけた場合、センタースゲグを拡大した場合、などいくつかの組み合わせで実施し、保針性能の比較を行った。その結果、センタースゲグを若干大きくすることで、従来船と同等の保針性を確保できることが分かった。
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