研究概要 |
本年度はシステムの無線化の影響調査とその対策および骨導再生システムの組み込みについて検討を行った.これまでの検討により,最適な骨導音取り出し位置は決定されており,かつ,船内騒音の大きな機関室が対象となっているため,システムをヘルメットにより構築することを検討した.本研究では作業者の支援システムという見地から無線化が必須となる.そこで無線化した場合の影響について調査し,それに対する対策について検討した.無線化においては主として伝送路の伝達関数の影響が受けやすいと考えられるが,この他の加算性ノイズに関しても調査した.学習用に用いる初期辞書モデルは前の実験と同じ不特定話者用モデルである.なお,ここでは騒音はホワイトノイズをスピーカより発生させて,OdBSNR付近になるように設定した.この結果,無線を経由した音声では認識結果が低下した.これは無線を使用した場合,雑音が音声と同じ周波数帯域であるためであった.また,この従来型のトランシーバを用いた無線化では伝送路の伝達関数の影響として高域成分の情報が失われることも確認した.このため認識率は環境が静かな場合でも数%の認識率となった.そこで前年度提案した手法を用いて適応処理を施したが70%程度の認識率にとどまった.このため,LANによる手法について比較検討する事にした.無線LANの場合は音声帯域に重畳雑音が存在しないため,低SNR環境下でも95%程度の認識率の実現が可能である.今回は単語認識のレベルでは無線LANを用いることにより実用レベルの認識率が得られることが明らかになったが,今後は自由発話や機関制御に特化した対話などの検討を行う必要があると考えられる.
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