研究概要 |
露天採掘跡地の廃棄物最終処分場への転用の可能性について、岩盤性状、地下水状況等に加えて、地形、地質、水系、環境、開発規制、地域社会等に関する情報をGIS(地理情報システム)を利用してデータベース化し、これらのデータベースを基に、事業者、地域住民、自治体、自然保護団体等の合意形成を含めて、AHP(階層化意志決定法)を適用することによって定量的に評価するシステムを確立した。 転用可能性評価システムは、STEP1:評価基準の抽出、STEP2:ウェイトの算出、STEP3:コンセプトマップの作成、STEP4:コンセンサスマップの作成の4つのSTEPで構成した。 1.STEP1では、露天採掘場の廃棄物最終処分場への転用可能性評価に対する評価基準として、当研究室でこれまでに構築した砕石資源と環境に関するデータベースの中から、34個の項目を抽出した。 2.STEP2では、事業者が受入量や経済性を重視して行う評価と地域住民が居住地への影響を重視して行う評価という階層構造を設定して、STEP1で抽出した評価基準に対して一対比較を行い、AHPを適用することにより各評価基準のウェイトを算出した。 3.STEP3では、GISを用いて各評価基準をデータ化したのちに0〜1の因子スコアを与えて評価基準の正規化を行った。また、STEP2で算出した評価基準のウェイトを全体の合計が1,000になるように重み係数に換算した。これら値を用いて、環境アセスメントの評価手法であるBattelle法的概念を導入し、転用可能性ポテンシャリティーを算出する方法を考案した。 事業者と地域住民について求めた露天採掘跡地周辺の転用可能性ポテンシャリティーを、1kmメッシュのラスターデータとして表したコンセプトマップを作成した。 4.STEP4では、STEP3で作成した各グループのコンセプトマップを使用して、最終的な合意形成であるコンセンサスマップ(合意形成図)を作成した。コンセンサスマップの作成には、各コンセプトマップを一定の比率で足し合わせる方法である適合マップ法とコンセプトマップを開発と保全の2つに分けてそれぞれに対するリスクマップを作成し、一方から他方のリスクを差し引く方法であるリスクマップ法で作成する方法を考案した。 5.本研究で構築した転用可能性評価システムを用いて、事例研究として宮城県北部の砕石場の廃棄物最終処分場への転用可能性ポテンシャリティー評価を行った。その結果、土地の相対的な重要度を評価することができ、定量的にポテンシャリティーを把握することが可能となった。 これらのSTEPを実行することで、転用可能性評価システムは、最終処分場の適地を抽出し、最終的な最適地の決定を支援システムとして機能することが期待される。
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