研究概要 |
鹿児島県鹿屋市野里地区で特殊地下壕探査を実施した。ここでは、高周波CSMT以外に、他の機関による地中レーダ等、複数の探査が同時に実施された。また貫入試験も実施され、その結果2カ所の地下壕の存在が確認された。高周波CSMT装置を用いた探査結果では、そのいずれもが高比抵抗領域として検出されたが、地盤の「緩み」の存在する地点でもそれらしい反応が得られたため、両者をいかに判別するかが課題として残った。 ニアフィールド遷移域での見掛比抵抗増幅を実証するため、佐賀大学附属資源循環フイールド科学教育センターに、貯水タンクを用いたモデル実験場を設置した。そこでの実験の結果、極端なニアフィールド域では空洞を探知できないが、ニアフィールド遷移域では空洞のコントラストが増大することが明らかになった。 ニアフィールド遷移域での地下空洞による見掛比抵抗の増幅の確認とその原因を探るため、有限差分法を用いた3次元プログラムを開発した。これを用いて、トンネル状地下空洞の電磁応答についての計算を実施した。ソースが水平ループコイルについて、以下のような興味ある結果が得られた。 1.トンネルによるニアフィールド遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,フェアフィールド域に比べて大きくなる。 2.この遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,トンネルの深さ(土被深度)によって決定され,土被深度がスキンデプス以下では周波数,大地の比抵抗値にほとんど依存しない。ただし,土被深度がスキンデプス程度以上になると急速に減少する。 このような特徴は、ニアフィールド遷移域での見掛比抵抗増大が小さい鉛直ループアンテナを波源として用いた場合には生じないので、地下空洞に対する大きな反応の原因は、水平ループアンテナに特徴的なニアフィールド遷移域での見掛比抵抗の増大と密接に関連している。
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