本研究の目的はWEB利用による教育用原子炉実験シミュレータの開発とし、研究期間を平成16年度から17年度の2年間。原子炉実験シミュレータは、具体的モデルを京都大学原子炉実験所臨界集合体施設(KUCA)の軽水減速架台に置き、原子炉実験シミュレータによる擬似的な原子炉実験を通して原子炉物理の理解を深めることを目的とした。 所定の研究期間での研究内容は以下の通り。原子炉実験シミュレータはシミュレータの操作する担当するGUI(Graphical User Interface)部と炉心特性評価部に分けることができる。 【JAVA言語によるシミュレータの開発】 開発したシミュレータをWEB上で公開するため、利用者のPC環境に依存しないJAVA言語でプログラムを作成した。原子炉実験はPC画面上に表示されたKUCA制御卓を模擬した操作レバー、操作ボタンのGUIを介した操作によって行う。同画面上のメニュー欄から、燃料板ピッチ、燃料フレーム列数、中性子検出器位置などを選択できる。また、下記の炉心特性評価部との連携が円滑に行えるような工夫を行った。 【炉心特性評価部】 利用者のPC環境が様々であることから、PC環境に大きな負担が掛からないような工夫をした。このため、想定しうる実験体系の中性子増倍特性をあらかじめ評価しておき、これらをデータベース化しておくことで、実験シミュレーションに必要な情報を必要に応じてデーターベースから読み込むことにした。炉心特性評価部では、主要設備であるPCクラスター(HIT社製、4CPU構成)により、標準原子炉解析コード(SRAC、日本原子力研究所開発)により中性子多群拡散方程式の群定数を作成し、当研究室で開発した修正中性子源増倍法に基づいて、3次元固有値問題および3次元固定源問題の数値解析から中性子増倍特性を評価している。 【WEBの公開】 原子炉実験シミュレータを用いた実験をさらに理解を深めるため、KUCAでの原子炉実験施設や実験原理の概要やシミュレータの取り扱い説明について、下記WEBサイトで公開し、また同サイトで原子炉実験シミュレータを実効形式ファイルで配布した。 http://shima25g.qe.eng.hokudai.ac.jp/~verl/ 原子炉実験シミュレータの開発研究成果は、2006年原子力学会、春の年会(東海大学・総合講演「炉物理教育の現状と将来:炉物理教育はどうあるべきか」)、および秋の大会(八戸工業大学・総論「原子力教育」)で発表した。
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