研究概要 |
熱エネルギー〜1GeVの中性子に対し,適切な線量応答特性を有する検出器を製作した。検出器の設計計算には,現在開発を進めている量子分子動力学法を用いた液体シンチレータ応答関数計算コードSCINFUL-QMD,重イオン輸送計算コードPHITSを用いた。エネルギー応答特性,検出効率を指標とした様々な解析に基づき,BC501型液体シンチレータと6^Li含有ZnS(Ag)シートを組み合わせたホスウィッチ型検出器を設計し製作した。 製作した検出器に対し,数MeV〜1GeVの単色中性子入射に対する液体シンチレータの応答関数を計算した。液体シンチレータ外での粒子輸送はPHITSを用い,液体シンチレータ内での粒子輸送及びその発光量計算にはSCINFUL-QMDを用いた。また,熱エネルギー〜数MeVの中性子に対するZnS(Ag)シートにおける反応率を,PHITSを用いて計算した。これにより,検出器の出力から線量を導出するための線量変換関数を整備した。 製作した検出器による速中性子,熱中性子,光子に対する信号弁別性能,線量変換関数を用いた中性子線量の評価性能を確認するために,日本原子力研究所イオン照射研究施設等において,熱エネルギー〜80MeV中性子に対する照射試験を行った。その結果,本検出器は,従来型モニタに比べて極めて高感度で,かつ広いエネルギー範囲の中性子線量測定に利用できることを明らかにした。さらに,デジタル波形処理技術を応用した検出器信号の解析により,従来のモジュール等を用いたアナログ解析手法よりも高精度で安定した線量導出システムを開発した。
|