太陽光は石油などに替わる有望なエネルギーとして最近とみに注目されているが、そのキーテクノロジーが高効率・低価格な太陽電池の実現である。そこで世界的に研究されているのがカルコパイライト構造を持つ化合物半導体として知られるCuInSe_2やCuInS_2などのCIS薄膜を光吸収層とする薄膜太陽電池である。太陽電池が宇宙空間でのエネルギー確保という観点から有効な発電手段であることは従来より指摘されているが、CIS薄膜太陽電池が宇宙という極めて厳しい環境下でどのような特性変化を示すかについてはほとんど報告例がない。 本研究はCIS薄膜をベースとする太陽電池が宇宙空間での利用を前提としたとき非常に有力な候補になる可能性があることを実験的に確認することを目的としている。前年度は、太陽電池セルの試作および基礎評価を行った。しかしそれらの薄膜を組み合わせて太陽電池セルを試作してみたところ、所定の性能が発揮されておらず、太陽電池としての発電性能を有していないことが判明した。 そこで今年度は前年度に引き続き、高品質CIS薄膜をベースとした太陽電池セルの試作を繰り返し、作製環境のさらなる清浄化に努力した。これは薄膜界面における結晶格子の不整合が主に起因すると考えられたためである。特に光吸収層となるCIS薄膜と窓層となるZnO薄膜、そしてバッファ層となるCdS薄膜の三者間の界面制御が困難を極めた。結果として発電性能を要するセルの試作には成功したものの、発電効率が当初目標を大きく下回り、所定の性能を発揮する試作セルを用いた放射光の照射実験を行うことはできなかった。今後はCIS層とCdS層との界面における格子整合に重点を置いて研究を進めていく予定である。加えて、すでに試作が完了している測定用の治具を用いて放射光の照射実験を行う計画である。
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