イネ培養細胞や植物体組織から抽出したDNAを用いて、8個のp-SINE1配列とそれらの隣接配列のメチル化をbisulfite sequencing法を用いて調べたところ、いずれのp-SINE1配列も隣接配列よりも強くメチル化されていることがわかった。しかし、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤で培養細胞を処理すると、p-SINE1の発現量が上がったが、p-SINE1配列のメチル化程度は減少していなかった。しかし一方で、p-SINE1と相同の配列を持つsiRNA(p-SINE1 siRNA)の量が、同じ阻害剤処理で顕著に減少することがわかった。そこで、p-SINE1の発現抑制へのp-SINE1 siRNAの関与を調べるため、siRNAの生成に関与するDCL(DICER-LIKE)タンパク質をコードする5個の遺伝子(OsDCL1 OsDCL5)の発現をそれぞれ抑制したイネ培養細胞の形質転換系統を用い、解析を行った。その結果、(1)p-SINE1 siRNA量はOsDCL3とOsDCL5の発現抑制系統で特に減少していたこと、(2)p-SINE1の発現レベルはOsDCL3とOsDCL5の発現抑制系統で特に上昇していたこと、(3)p-SINE1のメチル化はOsDCL3やOsDCL5の発現抑制系統であまり減少せず、OsDCL4の発現抑制系統で最も顕著に減少していたこと、がわかった。これらは、p-SINE1の発現抑制にOsDCL3とOsDCL5によって作られたsiRNAが関与していること、それらのDCLによって作られたsiRNAがいくつかのp-SINE1配列のメチル化に必要ではないことを示唆する。また、イネの各組織や細胞への高温処理の前後でp-SINE1の発現量とp-SINE1 siRNA量を調べたところ、p-SINE1発現量の高い組織でsiRNA量は多く、またp-SINE1発現量が減少する高温処理ではsiRNA量に変化はなかった。これらは、p-SINE1 siRNAが組織特異的な発現制御やストレスによる発現抑制よりも、構成的な発現抑制に関与していることを示唆する。
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