研究概要 |
RECQとゲノム安定化機構の関係に対するアプローチ <DNA損傷剤に対する感受性テスト>ショウジョウバエRecQ4遺伝子(dmrecQ4)の機能をRNA interference(RNAi)によって解析した。強いRNAi処理によって、発生が幼虫期あるいは蛹期に停止した。弱いRNAi処理条件下では、発生は成虫まで進んだが、幼虫期にブレオマイシン(DNA切断誘発剤)処理を行ったところ、著しい個体死が認められた。これらの結果より、DmrecQ4蛋白は発生に必須であることと、DNA損傷に対する修復に関わっていると考えられる。 <妊性と減数分裂組換えテスト>以前にdmrecQ4の変異株を分離していたが、それを用いて妊性テストを行った。雄は妊性、雌は完全不妊であった。減数分裂組換えを誘導するmei-W68遺伝子の変異によって雌不妊性は回復しなかった。これらの結果より、DmrecQ4蛋白は卵形成過程に必須であるが、減数分裂組換えには関わっていないと考えられる。Dmblm蛋白が減数分裂組換えに必須であったことから、これら2つのRECQ蛋白の、機能分化の局面を捉えたと言える。 <相互作用蛋白の同定>酵母Two-Hybrid Assay Systemを用いてDmrecQ4蛋白のターゲット蛋白をスクリーニングしたところ、転写制御に関わることが知られているサイクリンの一つが確認された。他の真核生物における研究結果から、このサイクリンが限られた細胞系列の分化を促すと考えられるので、DmrecQ4蛋白が転写制御を通して細胞分化を行っている可能性が浮上してきたと言える。さらに、DmrecQ4のターゲットとしてDNA結合性を持つ転写因子も確認された。 <DNAヘリカーゼ活性とATP加水分解活性の解析>DmrecQ4,Mus301とKu70蛋白は一次構造に基づいてDNAヘリカーゼ活性とATP加水分解活性を有すると考えられるので、その検証を目指して、DmrecQ4については酵母Pichia methanolica発現システムを用いて、また、Mus301とKu70については大腸菌PET発現システムを用いて、3つの蛋白の精製を行ってきた。
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