研究概要 |
本研究の予備実験として行ったデータベース解析により,ゲノム中5カ所(1q42.12,6p24.2,6q14.1,11q13.5,22q11.1)に,転写能を有するヒト内在性レトロウイルス(HERV)関連遺伝子のローカスが予想されていた.まず手始めとして,その予測を検証するために胎盤より抽出したRNAを用いてRT-PCRを行った.そのクローン化産物をシークエンスした結果,35クローン中74%にあたる26クローンが同一配列であり,最新のヒトゲノム配列(Build35.1)を元にin-house blastでmappingをした所,その配列は予測ローカスに一致した.この結果からMER50-intに属するHERVのうち胎盤で発現しているのは6p24.2にローカスを持つ06-01(in-house code)が主なものである事が分かった。更に、06-01を含めて5つのHERVの胎盤における発達時期依存性の発現様式をTaqMan法を用いて検討して報告した(研究発表欄に記載). 予備実験で候補となったHERV関連遺伝子の半数以上(4/5)で発現予測臓器が胎盤であった事と,上記06-01に関する確認実験で発現予測の検証が可能であった事をふまえて,ESTデータベース解析を行う際にはblast optionである"Entrez limit"の条件を工夫する事により,dbESTに記載されている臓器単位で行えるように解析法を修正した.そして,互いのゲノムの違いが少ないとされる霊長目の中でもヒトのみが脳の高次機能を獲得している事に着目して,機能の主体である脳組織を第一候補としてデータベース解析(dbEST & nr blast)を終了した.963のESTと764のmRNAが得られ,mappingして絞り込んだ結果,脳関連24のローカスが解析候補となった.その中の1つである05-001は,5p15.33にローカスを持つHERVK9に属する遺伝子であるが,胎児脳のRNAを用いてRT-PCRを行った所,70%(23/33)のクローンが05-001ローカス由来である事が分かった.現在,残りのローカスについて検討中である.
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