1.強酸性湖潟沼において、2004年と2005年に毎月1回(冬期を除く)、環境要因の垂直分布を測定した。春期と夏期は成層状態を示し、表水層には溶存酸素が存在して硫化水素は検出されなかったが、深水層は無酸素状態で硫化水素が蓄積していた。秋期循環期では、全層において溶存酸素は存在し、硫化水素は検出できなかった。 2.Acidiphilium属とAcidithiobacillus属にそれぞれ特異的なプローブによるFISH染色法によると、細菌群集は成層期では、Acidiphilium属が約90%を占め、循環期では2属がほぼ同密度で優占していた。 3.成層期と循環期の表層水を、それぞれ滅菌済みの綿栓付きフラスコに分注して、マイクロコズムを作成した。作成したマイクロコズムに、対照区、鉄添加区、暗条件区、低温区、有機物添加区、低酸素条件、チオ硫酸添加区およびチオ硫酸添加・低酸素区の操作を施し、恒温器内で培養した。ほとんどの操作区においては培養一週間後には2属の密度は変化しなかったが、チオ硫酸添加区においてAcidithiobacillus属が増加し、Acidiphilium属が減少した。また、低温区においても、Acidithiobacillus属の増加が見られた。 4.変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法から、Acidithiobacillus属は、At.caldusが主な構成種であるが、チオ硫酸添加によりAt.albertensisも出現することと、Acidiphilium属は、A.acidophilumだけでなく、別種のAcidiphilium sp.も存在することが確認できた。強酸性環境では、Acidiphilium属が生育に適し優占しているが、水温の低下と共に有酸素下で硫化物の供給がある場合Acidithiobacillus属が増殖すると考えられる。
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