1.初年度に行った予備実験から、アズキゾウムシではなく、ヨツモンマメゾウムシを用いた方が、遺伝的多様性と群集安定性の議論がしやすいという知見が得られたため、世界各地からのヨツモンマメゾウムシについて、競争様式や産卵分布などの生態的形質に基づくクローニングを行った。 2.遺伝的多様性ではなく、遺伝的には一様なのに、発生的多様性という被食者個体群を用いて1捕食者・被食者系がどのように安定化するかを、Individual-based modelによる理論的考察とともに、ヨツモンマメゾウムシと捕食寄生蜂Heterospilus prosopidisを用いた累代飼育系によって、実験的に検証した。 3.遺伝的多様性によってもたらされる群集の安定性を、異形花柱性の進化という枠組の中で捉え、優性/劣性の遺伝様式と自花受粉のコストの関数との関係に基づいて、種内種分化に相当する機能的雄花1雌花の進化について議論した。 4.行動多様性の群淘汰からの解釈や、遣伝的多様性が交渉ゲームにおいてもたらす影響などを、シミュレーションモデルを用いて考察した。 5.ヨツモンマメゾウムシの1地域系統(個体群)に由来する複数系列を作成し、系列間での飼育条件の違いや人為選択の違いが、競争様式の進化にもたらす影響を実験的に解析した。 6.ヨツモンマメゾウムシの1地域系統(個体群)内に見られる競争様式の多様性を説明する要因として、幼虫後期のマメ内での壁作り行動に注目して実験的解析を行った。 7.寄主個体群内にみられる発育速度の多様性が、寄主-寄生蜂系の群集安定性に及ぼす影響について、個体べ一スモデルを作成し、理論的考察を行った。 8.インゲンマメゾウムシの1齢幼虫におけるパイオニアとフォロワーの最適比率について、卵分布やマメ内での幼虫競争の強さを考慮した数理モデルを構築した。 9.多様な発育段階にある寄主(マメゾウムシ幼虫)に対して、雌寄生蜂が卵の性を産み分ける機構として、マメ内での寄主の活性(採餌音)の変化に注目して、実験的解析を行った。
|