「食う-食われる」の3種の系は、さまざまに複雑な動態パターンが創発される。3種系の典型例として、1宿主-2寄生蜂の実験系および2宿主-1寄生蜂の実験系の個体数動態を研究した。この系ではコガネコバチがキーストーン種であり、前者の系では寄生効率の高いコマユバチを抑制することにより、また後者の系では優勢な競争者であるヨツモンマメゾウムシの個体数を抑えることにより、3者の長期共存を持続可能にしている。これについては、寄生蜂における宿主の選好性について履歴効果(学習行動)を調べた。以上を踏まえ、本研究では3種系の実験、時系列解析、個体ベースモデルにより、解明した。 寄生蜂のいない条件でのマメゾウムシ2種の豆種に対する競争型の対比 アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシにアズキとブラックアイの2種の豆を与え、それぞれの豆種に対する再生産曲線を調べた。その結果、ヨツモンマメゾウムシはコンテスト型であり、スクランブル型のアズキゾウムシにより強い競争圧をかけていることが分かった。 寄生蜂の宿主に対する選好性実験 コガネコバチA.calandraeに、アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシの2種の宿主幼虫および蛹を与え、双方への選好性を調べた。寄生して育った幼虫が同種/異種の宿主を与えて、個々の寄主食入豆に接触してから試行錯誤を経て寄生に至るかのDVD録画撮影を行たところ、寄生蜂が羽化してから連続した同一宿主への寄生の学習行動によって、選好性より強化されることが分かった。 累代実験系の動態観測 長期累代実験系を維持し個体数動態を観測した。2種の豆を一定比率で混合し定期的に豆資源を更新し、3種系の個体数の観測を行ったところ、優先種の交代振動が長期間に渡って見られた。スイッチング捕食と寄生の学習を取り込んだ個体数動態モデルにより、実験系と同じパターンが得られた。
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