本研究では、ミドリシジミの仲間を対象として、(1)翅色の測定、(2)色覚の分析、(3)行動学的調査を行い、その色彩の機能を解明することを目的とした。(1)については前年度までの調査から概ね終了しているので、近縁のムラサキシジミ族(ミドリシジミ亜科)3種の分析を行い、2種が性的二型を、1種が一型を示すことを明らかにした。(2)については、複眼の全面照射という新しい手法を導入して再検討を試み、性的一型の7種、二型の4種について詳細な分析を行った。いずれの種も短波長域(UV〜青)で第一のピークを示し、翅の色彩との明瞭な対応は確認できなかった。しかし、性的一型の青い種では紫外域で、オレンジ色の種では長波長域でやや反応が高まる傾向が見られた。性的二型の種ではそのような傾向は認められなかった。一方、翅の色を分析したムラサキシジミ族3種について色覚を調べたところ、短波長域での強い反応に加えて、翅の色と対応した異種間での微妙なピークのシフトが確認された。したがって、色覚は、グループとしての傾向が強いが、一部の種で翅の色と対応した微調整が生ずることがわかった。(3)に関しては、これまでに得られた成果を公表することに努め、ミドリシジミの雄間および雌雄間行動に関する部分は、ムラサキシジミの色覚に関する報告と平行して、公表を完了したが、残りの部分は現在進行中である。
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