本研究では、ミドリシジミの仲間を対象に、翅色の測定、色覚の分析、行動学的調査を行った。翅色の測定では、緑色系の種の多くは緑に加えて紫外線を反射すること、緑色系以外の種では紫外線を特異的に反射するものがないことを明らかにした。色覚の分析では、複眼全体を照射できる積分球を用いて、ミドリシジミ族とそれに近縁なムラサキシジミ族を調べ、いずれの種も紫外から赤に反応すること、その第1ピークは短波長域にあることを明らかにした。一方、ムラサキシジミ族と、ミドリシジミ族のうちの性的一型の種において、翅の色と対応した微妙な修正を確認した。行動の調査は、ミドリシジミ族と、実験の容易さからヤマトシジミを加えて行い、雄による探雌行動や雌による多回交尾を明らかにするとともに、翅を貼ったモデル実験から、性的二型の種の雄は翅の色で雌雄を識別できること、雄の派手な翅の色は他の雄を排除する効果を持つこと、雄の翅の色は雌を誘引する可能性のあることを明らかにした。
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