研究概要 |
目的:森林生態系の炭素循環における外生菌根菌の役割を定量的に評価するための第一歩として、菌根中の共生菌バイオマスの定量を試みた。 方法:中部・中国地方の冷温帯、温帯、暖温帯林で、アカマツ、モミ、コナラ、ブナの実生と40年生以上の成木の菌根を採取し、まず(1)菌根の表面構造の顕微鏡観察により、菌根を形態的にいくつかのタイプに分類した。次に、(2)購入した凍結ミクロトームで、菌根の輪切り切片を作成し、顕微鏡観察により、菌根の断面積にしめる菌鞘の割合を求めた。 結果:(1)菌根のタイプについて、アカマツ実生4、成木7;モミ実生3、成木7;コナラ実生2、成木5;ブナ実生3、成木9であり、成木の方がタイプ数が多く、多様な菌類が共生していることがうかがえた。(2)菌根中にしめる菌鞘の面積割合(%)について、アカマツ実生23.8±2.0、成木24.6±0.8;モミ実生18.3±0.9、成木22.8±1.1;コナラ実生20.8±0.8、成木34.0±0.8;ブナ実生27.8±1.3、成木24,7±1.7であり、基本的に実生と成木の間に有意差はなく、樹種間でも大きな差はなかった。また、菌根のタイプ数が異なっても、菌根にしめる共生菌バイオマスの割合は変化しないことも分かった。 今後:現在エルゴステロールを指標とするバイオマスの定量を試みている。投稿論文も準備中である。
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