目的:森林生態系の炭素循環における外生菌根菌の役割を定量的に評価するために菌根中の共生菌バイオマスの定量を試みた。 方法:北海道、本州中部・中国地方の亜寒帯、冷温帯、温帯、暖温帯林で、針葉樹6種(モミ、トドマツ、カラマツ、アカエゾマツ、エゾマツ、アカマツ)、広葉樹7種(ダケカンバ、シラカンバ、ブナ、ミズナラ、アラカシ、ウバメガシ、コナラ)の実生の、アカマツ、モミ、コナラ、ブナについては40年生以上の成木の菌根を採取した。その後、まず(1)表面構造の顕微鏡観察により菌根をいくつかの形態タイプに分類した。次に、(2)凍結ミクロトームで菌根の輪切り・縦切り切片を作成し、顕微鏡観察により、菌根の断面積にしめる菌鞘の割合を求めた。(3)試料の一部はエルゴステロール分析のために凍結保存している。 結果:(1)菌根の形態タイプ数については、成木の方が実生よりも多く、多様な菌類が共生していることがうかがえた。(2)菌根中にしめる菌鞘の面積割合(%)は、針葉樹実生18.3〜26.5、広葉樹実生20.8〜31.3であり、広葉樹の方が大きい傾向があった。(3)面積割合は、基本的に実生と成木の間で有意差はなかった。(4)面積割合は、菌根の形態タイプが異なっても変化しなかった。(5)アカマツとブナの成木で、菌根断面積にしめるハルティッヒの割合を求めたところ2.2〜2.4%であり、ハルティッヒネットを構成する菌類バイオマスも無視できないことが分かった。 今後:現在面積割合の季節変化について検討中である。面積割合からバイオマスを推定することの妥当性を、エルゴステロールを指標とするバイオマス定量により検討予定である。これらの成果を2報以上の論文として投稿準備中である。
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