○強毒病原体の出現:宿主の集団構造による適応度地形の双安定化と強毒株の飛躍進化 毒性の進化の理論は一般に感染と回復のトレードオフによって定められる毒性の最適のレベルへの適応進化を予測する。ここでは空間的な構造をもつ集団を考え、獲得免疫をもつ宿主に感染する病原体の毒性の進化を考える。宿主間ネットワークとして正方格子上の規則的なリンクを部分的にランダムに付け替えたsmall worldネットワークを採用し、ランダムリンクの割合を変える事で感染の局所性を変える。進化動態の解析の結果、感染が局所的であればあるほど、強毒の病原体が有利になりやすいことが分かった。さらに、宿主の局所的な接触と社会構造によって進化動態の双安定性が引き起こされ、その結果、病原体の集団において毒性の急激な変化が起こり得ることが理論的に示された。このモデルはウサギ出血病ウイルスの強毒変異株が突然出現したことに理論的な説明を与える。研究成果はScience誌に掲載発表した。 ○抗原型変異株と宿主の集団免疫・交差免疫に基づく伝染病流行予測。 インフルエンザやデング熱など異なる抗原サブタイプが時期をずらして流行する病原体の有効な予測モデルを構築するため、交差免疫と感染率の季節性を考慮した疫学モデルの非線形共鳴、系統ごとの振動パタンの同期と非同期、流行の順序などを疫学モデルにもとづき解析し、系統ごとに流行年のずれる非同期振動は交差免疫が弱いときに起こりやすく、抗原性の近い系統は流行年の同調した複数年周期振動を示しやすいことなどを明らかにした。
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