研究課題/領域番号 |
16570022
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192052)
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研究分担者 |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方圏フィールド科学センター, 助教授 (80212249)
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キーワード | 精子競争 / 父性の操作 / 協同的一妻二夫 / DNA父性判定 / 精巣投資 / カワスズメ / 巣の形状 / ジュリドクロミス |
研究概要 |
今年度は、主として共同繁殖魚ジュリドクロミス・トランスクリプタスを用いて、協同的一妻二夫でもメスによる受精の操作、及び雄間の精子競争について研究を行った。一夫一妻の場合と比べ、卵は広く産まれた。狭い巣奥部に産みつけられた卵は小型オスが、広い巣前方部に産まれた卵は大型雄がより多く受精させていた。また巣の奥部に産まれた場合では卵全体は小型雄が、前方部に埋めれた場合では大型雄がそれぞれより多く受精させていた。この結果は、産卵された卵の場所により、両雄の受精割合が変わることを意味する。また、2雄の場合1雄に比べ産卵場所を変えている。このことは、雌が産卵場所を変えることによって卵の父性の操作をしていることが強く示唆される。操作によって雌が得る利益は、雄からの子の保護行動への投資であると考えられるが、この点は今後の課題である。 本種での精子競争に関する研究は以下の通りである。雌雄をペアで飼育した場合と、一妻二夫で飼育した場合とで、飼育後約3ヶ月後の雄の精巣重量は、明らかに後者の雄でその重量は増加していた。この結果は、雌の一卵塊に2雄の子供が見られること、大型雄が小型雄の受精を阻止することができないとの行動観察から予想される、産卵時の精子競争の高い危険性と対応したものであると考えられる。またこの結果は野外での観察と一致し、かつ野外で生じていた、一妻二夫での雄の大きな精巣投資が、状況に合わせ雄が投資をかえたものであることを結論づけるものである。同一ステータスで、状況に応じ精巣投資をなわばり雄が変える例はこれまで報告はない。 以上のいずれの結果も、これまで世界でも研究例のない独創的なものである。今年中にそれらの原稿は、学術雑誌に投稿する予定である。また、これらの研究から、雄は何を刺激として精巣投資の量を変えるのかなど、新たなテーマも浮かび上がってきている。
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