一夫多妻制の配偶システムを持つ種では、高い性選択圧にさらされているため、雄の誘性的な形質と免疫能を同時に発達させる必要がある。免疫能とアンドロゲン濃度には拮抗作用がみられるため、質的に劣る雄は免疫能を保ったまま、誘引形質を維持するのが困難となるため、免疫能は暴露型ハンディキャップとなると考えられている。霞ヶ浦湖岸に2004-2006年に確立したオオヨシキリの標識個体群において、免疫能の高い個体が高い配偶成功を得ているかどうかを研究した。フィトヘマグルチニン(PHA)を用いて擬似免疫反応を誘発させ、個体ごとに免疫能を測定した。免疫能と各個体の体重、体のコンディションの間には相関は認められなかったが、1歳個体の免疫能が高い傾向が認められた。オオヨシキリでは、血液寄生虫の感染率が高く、26%の個体が広義の烏マラリア(含むヘモプロテウス)、及び10%の個体が烏トリパノゾーマに感染していた。鳥マラリアに感染した雌親の営巣成功率は、非感染雌に比べて低かった。鳥マラリアに感染していた個体と感染していない個体を比較したところ、感染した個体が高い免疫能を持つ傾向があったが有意ではなかった。雄の配偶ステータスに強い影響を与えている要因を明らかにするために、測定年をランダム効果とし、雄の配偶ステータスを従属変数とし、免疫能の強さ、年齢、鳥マラリア感染率、鳥トリパノゾーマ感染率、体重を独立変数として変数増減法により一般化線形混合モデル(GLMM)を構築した。その結果、雄の配偶ステータスに影響を与える要因として、雄の年齢、免疫能の強さ、年齢と免疫能の交互作用の3つの要因が効いていることが明らかになった。
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