研究概要 |
ハゼ科ベニハゼ属魚類は双方向の性転換をすることが本プロジェクトで明らかになってきた.平成18年度は奄美大島に生息するベニハゼ属アオギハゼを観察した.本属他種は基質に付着し2-5尾のグループで生息するのに対し,本種は洞窟の中の中層で群れている.このため同属他種とは雌雄性や社会構造が異なっていることが予想された. 本種の群れの大きさを目視および採集で計測した.群れは4-250個体まで様々であった.洞窟の容積が大きいほどグループサイズは有意に大きかった.採集したグループの個体数は4-63個体であった.グループ内の性比は雌が多く,オスの個体数は1-10個体で,雄の全長は雌より有意に大きかった.オキナワベニハゼでは一夫多妻のハレムであるのに対し,アオギハゼは大きなグループではキンギョハナダイのような複雄群であると思われる. 生殖腺の構造を組織学的に観察したところ,全ての個体が卵巣と精巣を同時に有し,雌では卵巣が成熟し,逆に雄では精巣が発達した.これは他のベニハゼ属魚類と同様で双方向の性転換が予想される.しかし,多くの場合,雄のほうが大きいので本種は雌から雄の雌性先熟的な性転換をすると思われる. 本プロジェクトでは多くのベニハゼ属魚類の性転換について研究してきたが,カスリモヨウベニハゼを除く全ての種で双方向の性転換をすると考えられる.今後は他の属の雌雄性や社会構造と比較しながら双方向性転換の進化について考察してゆきたい.
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