研究概要 |
数種の植物において蓄積されるプリンおよびピリジンアルカロイドは、ヌクレオチド由来の二次代謝産物である。これらのアルカロイドは、化学防御やアレロパシーにおいて重要な役割を果たしている。しかし、カフェインを除いて、これらの化合物についての生合成や代謝についての研究はほとんどなされていない。コーヒー実生において、カフェインは主に葉と子葉に局在した。根や茎の老いた部分ではカフェインは,ほとんど検出されなかった。一方,トリゴネリンは実生のすべての部分に存在した。テオブロミンとカフェインは若い葉と,芽を含む若い茎でのみ合成され、根や老化した子葉では生合成は認められなかった。すなわち、カフェインの生合成と蓄積は地上の組織(葉、子葉、茎)に限定され、一方トリゴネリンは、実生のすべての部分で合成され局在していることが明らかになった。これら二つのアルカロイドの異なった働きについて考察した。次に、コーヒー植物の葉と果実におけるトリゴネリンの生合成を、ピリジンヌクレオチドのde novo合成経路の中間産物である[^3H]キノリン酸とNADの分解産物である[^<14>C]ニコチンアミド、[^<14>C]ニコチン酸を用いて調べた。トレーサ実験から、ピリジンヌクレオチドサイクル(ニコチンアミド→ニコチン酸→ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)→ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)→NAD→ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)→ニコチンアミド)がコーヒー植物で働いていることが示唆され、トリゴネリンはこのサイクルで形成されるニコチン酸から合成されることが示された。また,トリゴネリンは果皮で合成され、種子に転流されると考えられた。
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