研究課題
混合プライマーを用いたPCRによってミヤコグサ菌根より単離した3分子種の植物細胞膜局在性リン酸トランスポーターcDNAをLjPT8,LjPT16,LjPT4と仮に名付けていたが、簡易にするためLjPT1-LjPT3と名称を変更した。リアルタイムRT-PCR法でこれらの発現状況を解析し、LjPT3のみがミヤコグサにおける菌根特異的リン酸トランスポーター遺伝子であることを再確認した。次いで、in situ hybridizationによってLjPT3 mRNAは樹枝状体を含む皮相細胞のみに局在することを見いだした。さらにLjPT3の役割を明らかにするため、毛状根形質転換によってRNAiコンストラクトをミヤコグサに導入した。その結果、ノックダウン形質転換体のLjPT3 mRNAレベルはベクターのみを導入した対照に比べ20%以下に低下したがその他のリン酸トランスポーターmRNAレベルは変化なかったので、RNAi法の特異性が確認された。菌根菌を接種して低リン酸濃度で対照との生育を比較したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体の生育が有意に劣っていた。そこで、これらの植物に[33P]オルトリン酸を菌根経由で吸収させたところ、ノックダウン形質転換体ではリン酸吸収量が少ないばかりでなく放射能が樹枝状体付近に蓄積することがわかった。共生時における菌根菌の発達をさらに詳しく観察したところ、LjPT3ノックダウン形質転換体では対照に比べて樹枝状体の数が半分近くに減少する一方、idioblast細胞(褐色のフェノール化合物を液胞に蓄積し病原応答に関与すると思われる植物の細胞)や菌糸侵入地点が2倍近くに増加していた。この結果は、宿主植物の正常なリン酸吸収が菌糸の発達に必要不可欠であるばかりでなく、植物は能率の悪い菌根菌を排除して新たな菌根菌との共生を進めることを示唆していると思われた。
すべて 2006 2005
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