研究概要 |
レタス芽生えを酸性条件下で培養すると、主根の成長が抑制され、この抑制を補償する形で根毛が形成される。この現象において、酸性条件ではMnの吸収が1/7に減少し、中性pH条件下で培地のMn濃度を減少させると根毛形成が誘導され、酸性条件下でMnを過剰に与えると根毛形成が抑制された。酸性条件においた場合、根で主に発現しているABCトランスポータファミリーに属するLs-MDR1遺伝子の発現が30分以内に1/3に減少した。そこで、Ls-MDR1がMn輸送を行っており、この遺伝子の発現が減少する事が根毛形成を誘導している可能性が考えられた。 そこで、まず、Ls-MDR1がMn輸送に関わるか、明らかにすることを試みた。まず、酵母においてMn輸送に関わっていると考えられる、SMF1,SMF2遺伝子を破壊した株を作出した。この2重突然変異体を培養したところ、通常の培地を用いた場合、成長速度は野生株と変わらなかったが、EGTAを添加すると成長速度が遅くなり、Mnを添加することで元の成長速度に戻った。この結果から、今回作出した2重突然変異体は野生株に比較してMn輸送能が減少していることが明らかとなった。 次に、レタスのLs-MDR1を酵母の発現ベクターに組み込み、2重突然変異体に導入し、EGTA存在下で成長の遅れが回復するか調べたが、回復が見られなかった。 この原因として、Ls-MDR1がMn輸送には関与していない可能性、導入したLs-MDR1が正常に発現していない可能性、発現しているが正常に原形質膜に配位していない可能性、Ls-MDR1単独では機能を発揮できない可能性等が考えられた。現在、回復しなかった原因を解明中である。
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