研究概要 |
1 σ因子のプロモータ認識活性の定量的アッセイ法の確立 Arabidopsis thalianaのsig5欠損変異体から調製したプロトプラストにsig5の発現カセットを用いσ_5を過剰発現させ、それが葉緑体遺伝子psbDの転写に与える影響を調べることでsig5のプロモータ認識活性を定量的にアッセイする方法を確立した。 2 σ因子への変異導入によるプロモータ選択的認識機構の解明 葉緑体のσ因子はすべて真性細菌のσ^<70>ファミリーに属し、認識するPEPプロモータの構造(-35,-10領域ともに)はよく似ている。しかし、psbD blue light responsive promoter(psbDBLRP)はσ_5のみにより認識される。そこで、sig1とsig5のキメラ配列を持つ形質転換ベクターでAtのプロトプラストを形質転換し、psbDBLRPからの転写への影響を調べた。その結果、-10、-35エレメントにそれぞれ結合するSig5の2.5、4.2領域ではなく、N-末端側の領域にpsbDBLRPの特異的認識挙動を与える領域があることを明らかにした。 3 Atsig遺伝子転写の光誘導挙動解析。 6種のATsigの中で、sig5はユニークな挙動を示す。他の5種のsigは、青色光(460nm)、赤色光(660nm)による光誘導を受けるが、sig5は、青色光のみにより、強い誘導を受ける。光レセプターの欠損ミュータントの解析からsig5光誘導受容体がクリプトクローム(cry1,cry2)であることを明らかにした。また、青色光によるsig5の誘導時間は約30分と他のsigに比べてきわめて短い特徴がある。これら性質はsig5のプロモータを青色光をトリガーとする葉緑体導入遺伝子の人為的発現制御システムを構築に利用できる可能性を示している。現在、青色光のみによって活性化されるsig5プロモータのシス因子の同定を行っている。
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