研究概要 |
課題I 変異導入による複数のSIG因子のプロモーター選択的認識機構の解明 高等植物の葉緑体RNAポリメラーゼ(RNAP)のSIG因子は6種あり、認識するPEPプロモーター群の構造が少しずつ異なる。例えば、psbDBLRPはSIG5のみにより認識される。この機構を知るため、SIG5特定の領域をSIG1の配列に置き換えた改変SIG5をArabidopsis thalianaのプロトプラスト中で過剰発現させ、psbDBLRPからの転写への影響を測定した。その結果、-10や、-35エレメントに結合する領域ではなく、4.2領域中の-35エレメントとは直接相互作用しないアミノ酸残基N484がpsbDBLRPの認識に必須であることが分かった。さらに、DNAとは相互作用しない4.1領域中にも鍵となるアミノ酸残基が含まれていることが分かった。この結果は導入遺伝子特異的に働く改変σ因子・改変プロモータ対の構築に応用できる。 課題II sig1〜sig6の光誘導発現挙動の解析 6種のATsig遺伝子中でsig1とsig5は環境応答性のSIG因子で、その転写は速い光応答性を示す。sig1は青色光(460nm)、赤色光(660nm)いずれでも光誘導転写を受けるが、sig5は青色光のみにより、強い誘導を受ける。光レセプターの欠損変異体の解析からsig5光誘導レセプターがクリプトクローム(CRY1,CRY2)であることを明らかにした。sig1の転写は2μmol/m^2sで青色光誘導を受け強度依存性を示さない。一方sig5は2〜10μmol/m^2sでは一定であるが、それ以上では光強度増加に伴い増加する2段階の光強度依存性を示し、第一段階の誘導には、CRY1とCRY2が相加的に働き、第二段階の誘導にはCRY1のみが働いている事が分かった。一方、sig1の青色光転写誘導にはCRY1のみが光受容体として働いている事が分かった。
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