研究概要 |
完全長cDNAの一過的過剰発現により、偏光下におけるプロトプラストの極性形成や不等分裂に異常をもたらす原因遺伝子群を同定する。 1,本年度新たに完全長cDNA約600種類の一過的過剰発現によるプロトプラスト再生異常のスクリーニングを行い、これまでのスクリーニングで得られたものと併せて約200種類のクローンにおいて、表現型の再現性、頻度を検討した。その結果、不等分裂が等分裂になるもの、不等分裂がおこらず等方位的に細胞が巨大化するもの、偏光下における再生原糸体の伸張軸方向が正常な場合と90度異なるもの、細胞クラスターを形成するものなど細胞極性形成や不等分裂に関わると考えられる遺伝子を58種類同定した。これらcDNAの全長の塩基配列を決定し、配列に基づいた機能推定を行った。5種類が既知の極性因子や不等分裂因子と類似していた。 2,不等分裂候補遺伝子の機能解析を進めるため、RNA干渉による表現型の観察を行った。18種類の遺伝子を検討し、複数の遺伝子において機能抑制が不等分裂異常を引き起こすことが示唆された。また、候補遺伝子の終始コドンの直前にcitrine蛍光タンパク質を遺伝子ターゲティングによりノックインした形質転換体の作成を開始した。これにより、候補遺伝子産物の細胞内局在の変動を内在性プロモーター制御下において調べることが可能となる。頂端幹細胞で特異的に蓄積するものなどが同定できた。 3,細胞極性や不等分裂制御と微小管系は密接な関係にある。ヒメツリガネゴケにおいてチューブリンを可視化できるGFP-alphaチューブリンのラインを確立した。このラインを用いて不等分裂時におけるチューブリンの動態解析を行っている。このラインをバックグランドにして不等分裂候補遺伝子の遺伝子破壊や過剰発現を行うことにより、微小管系との関係を調べる準備が整った。
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