研究概要 |
シロイヌナズナアンチオーキシン耐性変異体(aar1)は、PCIB(p-chlorophenoxyisobutyric acid)による根の生長阻害に対する耐性を指標として取得された、合成オーキシン2,4-Dに対して感受性が低下した変異体である。前年度までの研究で、aar1の原因遺伝子は、推定等電点3.3の低分子タンパク質(62アミノ酸、予測分子量6.9kDa)の動植物で高度に保存されている機能未知タンパク質を暗号化していることが明らかとなり、低分子酸性タンパク質1(small acidic protein 1; SMAP1)と命名した。本年度は、SMAP1タンパク質の生化学的機能についての知見を得るため、SMAP1とGFPとの融合タンパク質を作製し、シロイヌナズナ内で発現させた。まず、35Sプロモーター制御下でSMAP1-GFPおよびGFP-SMAP1を発現させたaar1変異体において、aar1形質を野生型に相補することを確認し、SMAP1とGFPの融合タンパク質がSMAP1としての機能を保持していることを明らかにした。次にSMAP1プロモーター制御下で、配列を様々に改変したSMAP1とGFPの融合タンパク質を作製しaar1へ導入した。その結果SMAP1は核に局在するタンパク質で、C末端にあるSMAPファミリーでよく保存されているフェニルアラニンとアスパラギン酸が豊富な領域が、SMAP1活性と核への局在に重要であることが示唆され、SMAP1が、オーキシンの細胞内情報伝達に関わる新規タンパク質であることを明らかにした。
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