本研究においては、以下のようにタバコBY-2細胞などの形質転換細胞株の開発とそれらを用いた細胞骨格および液胞の動態解析を行った。 1)生細胞での細胞内構造の可視化系の確立:チューブリン、フィンブリン、液胞膜タンパク質と蛍光タンパク質の融合遺伝子を導入し、微小管、アクチン繊維、液胞についての可視化系を確立した。 2)立体再構築アルゴリズムの研究と実装:連続光学切片を基にサーフェスモデルとして3次元モデリングを行う立体再構築・解析ソフトウェアを開発するとともに、それを用いて細胞分裂時に現れるTVMなど、複雑な液胞構造の存在を明らかにしてきたが、実用的な立体画像構築ソフトウェアREANTのプログラムについて一応の完成をみた。 3)液胞の成長と分化の解析:ほとんどの液胞を除いたミニプロトプラストを培養すると、細いチューブ状の液胞が連結した網状液胞を経て巨大液胞への発達が観られ、この液胞の分化・再生過程を経時的に観察することができた。液胞構造の維持や分布には細胞骨格の関与がみられた。 4)細胞分裂における細胞骨格の関与:生細胞でのアクチン繊維の観察から、M期に表層のアクチン繊維が2本のバンド様構造(MFTP)に再編成され、このMFTPの間に細胞板が形成された。 5)細胞分化過程における液胞および細胞骨格の動態解析:上記のBY-2細胞系は基本的に分化能を持たないので、細胞分化過程での液胞や細胞骨格の検討を行うべく、シロイヌナズナ培養細胞を用いた観察から、管状要素の細胞分化過程における特徴的な二次壁形成や液胞の動態が細胞骨格によって制御されていることが分かった。
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