ミドリゾウリムシの無菌二者培養における増殖の様子の観察に基づいて、ミドリゾウリムシの細胞肛門から細胞内の共生クロレラが生きたままエクソサイトーシスによって排出されることを光学顕微鏡観察で明らかにした。異なった条件下で24時間中にミドリゾウリムシから排出された共生クロレラの数を調べて統計解析を行ったところ、共生クロレラの排出が宿主ミドリゾウリムシの栄養状態に影響されて起こることが示され、これによりミドリゾウリムシにおいて細胞内の共生クロレラの数を調節するためのこれまでに知られていなかった仕組みが存在することが示唆された。 また、酵母ヤロヴィア(Yarrowia lipolytica)が白色ミドリゾウリムシに感染して共生することを発見した。ヤロヴィアの感染を解析したところ、この酵母を保持している白色ミドリゾウリムシの細胞形状にある条件下で異常が生じることが観察され、特に強い異常が起こった宿主細胞はその生存率が低下するなど、宿主白色ミドリゾウリムシにとってヤロヴィアの感染が有害であることが示された。これらの結果と、クロレラを保持している緑色ミドリゾウリムシには酵母はまったく感染しないという観察結果から、自然の淡水環境下において、共生クロレラが存在することが宿主ミドリゾウリムシにとって自然に存在する潜在的に有害な微生物の感染に対するある種の防御機構として機能しているのではないかという示唆が得られた。さらに、ヤロヴィアを保持しているミドリゾウリムシを長期にわたって培養している間に、ミドリゾウリムシ細胞内において共生生物を包んでいる脂質膜小胞(peri-symbiotic vacuole)の形状と細胞内の酵母の細胞形態が変化することが観察された。
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