本研究では最初に、クロロゴニウムChlorogonium elongatum(単細胞の緑色鞭毛虫)を唯一のエサとしたミドリゾウリムシParamecium bursariaの無菌二者培養法を確立し、この培旋法におけるミドリゾウリムシの増殖の様子などを調べた。次に、ミドリゾウリムシが持つ共生クロレラを細胞内で包んでいるperi-algal vacuole(PV)膜の単離を行うために、まずPV膜で包まれた状態の共生クロレラの単除法を孤立した。また、細胞をホモジナイザーで破砕した後、Percoll密度勾配遠心法により完全なPV膜を持つクロレラを単離することに成功した。また、ミドリゾウリムシの無菌二者培養における増殖の様子の観察に基づいて、ミドリゾウリムシの細胞肛門から細胞内の共生クロレラが生きたままエクソサイトーシスによって排出されることを光学顕微鏡観察で明らかにした。これによりミドリゾウリムシにおいて細胞内の共生クロレラの数を調節するためのこれまでに知られていなかった仕組みが存在することが示唆された。さらに、ミドリゾウリムシの細胞膜直下に一細胞辺り数千個ほど配備・固定されているトリコシストと呼ばれる細胞小器官が、電子密度の高い穎粒に変化するなどして消失し、白色ミドリゾウリムシに取り込まれたクロレラがその空いた場所に固定されて共生する、という可能性が示唆された。最後に、酵母ヤロヴィア(Yarrowia lipolytica)が白色ミドリゾウリムシに感染して共生することを発見した。ヤロヴィアの感染を解析したところ、この酵母を保持している白色ミドリゾウリムシの細胞形状にある条件下で異状が生じることが観察され、特に強い異常が起こった宿主細胞はその生存率が低下するなど、宿主白色ミドリゾウリムシにとってヤロヴィアの感染が有害であることが示された。
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