研究課題
ミトコンドリア核の凝縮と分裂のダイナミックスを解明するために、形態的解析と生化学的解析を並行して行い、以下の成果を得た。1.酵母野生株ミトコンドリア核とミトコンドリアDNA結合タンパク質Abf2p欠損ミトコンドリア核の違いを明らかにするために、両者からの単離ミトコンドリアおよびミトコンドリア核を用いて様々な条件におけるmtDNAのヌクレアーゼ感受性を比較検討した。その結果、ミトコンドリアとミトコンドリア核の両者で、Abf2p欠損株のmtDNAは野生株に比べてDNase Iに対してより高い感受性を示すことが分かった。しかし、一方1mM CaCl_2存在下ではAbf2p欠損株の単離ミトコンドリア核は野生株に比べて、ミクロコッカルヌクレアーゼ処理に対して耐性を示すという新たな違いを明らかにした。2.嫌気・好気培養変換過程でおこるミトコンドリア核の動的挙動について解析を行った。その結果、嫌気培養で形成される凝集ミトコンドリアの形成にはFzo1遺伝子が必要であり、嫌気・好気培養変換過程でおこるミトコンドリア核の急激な小球分散化にはDnm1遺伝子が必要であるという結果を得た。また、嫌気培養した酵母を好気培養に移して30分以内では凝縮したミトコンドリア核ににまだ形態的変化が見られないが、細胞内アクチンパッチに急激な分散化がおきていることを発見した。この現象は新しい知見であり、ミトコンドリア核の凝縮と細胞骨格の関わりについてさらに解析を継続している。3.酵母Candida parapsilosisのミトコンドリア核を単離して解析した結果、S.cerevisiaeの20kDa Abf2pに対して、C.parapsilosisでは30kDaのAbf2pホモログが存在することを明らかにした。このことは酵母ミトコンドリアDNA結合タンパク質Abf2pにはかなり大きな種間変異がみられることを示している。
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Cytologia 70
ページ: 287-293
FEMS Yeast Research, online publication date 15-Nov-2005