本研究では、酵母ミトコンドリア核(mt核)の凝縮と分裂の機構について形態的および生化学的解析を行い、以下の点を明らかにした。 1、嫌気培養・好気培養変換系におけるmt核形態変化の解析を行った。酵母を嫌気培養すると定常期では大きく凝縮したmt核が形成され、この酵母を好気培養に移すと6時間のうちにmt核は急激に小球状に変化する。本研究では巨大凝集型mt核と小球状mt核が含むmtDNA分子数を明らかにし、mt核の形態変化に伴ってmt核結合タンパク質の量的変動がみられることを明らかにした。次に、mt核の変化カミ、ミトコンドリア自身の凝集型から小球型への変化を伴うことを明らかにした。さらに、この形態変化よりも先にアクチン細胞骨格の急激な分散が起こる事を明らかにした。 2、mt核の凝縮におけるタンパク質の役割を解析した。まず、mt核結合タンパク質として、新規な21kDaタンパク質の存在を発表し、Mnp1pと名づけた。そして、ミトコンドリア核タンパク質の進化的側面を解明するために、酵母Candida parapsilosisの各種ミトコンドリア結合タンパク質を同定するとともに30 kDa Abf2pホモログを精製したのまた、酵母Pichia jadintiからも26kDa Abf2pホモログを精製しmt核の凝縮における役割を考察した。 3、疎核形成に重要な役割を果たしていると考えられているAbf2pタンパク質を欠損した酵母からmt核を単離し、ヌクレアーゼ感受性を解析した。その結果、Caイオン存在下ではAbf2pを欠損したmt核の方が、野生型よりもミクロコッカル・ヌクレアーゼ(MNase)に耐性を示すという予想に反した結果を得た。また、この研究の過程で、酵母mt核に結合する主要なヌクレアーゼはNuc1pであること、核中のmtDNAはMNase処理に対して連続的分解を受けることを明らかにした。
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