二種類の細胞間で核融合が起こる際、結果的に融合核のクロマチンタンパク質、特にヒストンの組成や分布がどのようになっているかは定かでない。 そこで、本研究では、in vitroの細胞融合の系を利用して、異種ヒストンが細胞融合によって共存した場合、それぞれのヒストン種が融合核においてどのような分布を示すかをGFPなどのレポーター遺伝子を指標に解析することを目的とした。 まず、本年度は、すでにテッポウユリのヒストンH1変種がGFP(緑色蛍光タンパク質)とともに導入されている形質転換タバコの葉肉細胞からプロトプラストを作成し、非形質転換のタバコ培養細胞BY-2からのプロトプラストと電気的細胞融合を行い、その後の培養経過に伴う核の形態変化を追跡することを試みた。その結果、二種類からなる融合細胞を比較的容易に、しかも大量に得ることができることがわかった。しかしながら、年度途中における細胞融合装置の故障により、新たな細胞融合装置の購入を余儀なくされたために、無菌培養による融合核の形態変化はまだ追跡できていない。 一方、すでに得られているGFPとは別のレポーター遺伝子であるRFP(赤色蛍光タンパク質)を導入した新たな形質転換細胞を作成を試みた。その結果、現在発光が弱いものの、赤色蛍光を発するBY-2細胞が得られており、上記のGFPが導入されているタバコ葉肉細胞との細胞融合により、細胞中に緑色と赤色の両方の核を有する融合細胞が得られている。 以上のように、初年度は、タバコにおける細胞融合(核融合)の実験系ならびに生体標識した融合細胞の蛍光観察を継時的に行える系の確立に成功した。
|