研究概要 |
キイロショウジョウバエのDSCAM(Down syndrome cell adhesion molecule)遺伝子は、24個のエキソンからなり,エキソン4、6,9,17では、それぞれ12,48,33,2通りのサブタイプが存在し、その内のそれぞれ1つずつを複式RNAスプライシングの結果選択すると考えられている。理論上12x48x33x2=38,016通りの多様なDSCAM分子が存在すると考えられ、この分子的多様性は、複雑で多様な神経結合の特異的形成を説明しうる可能性を示すものとして注目されている。実際、DSCAM突然変異体では、胚一部神経の軸索の枝分かれに異常が見られることが報告されている。本研究では、38,016種のDSCAM各スプライシング産物のショウジョウバエ胚,幼虫及び成虫神経回路における機能解明を目指す第一段階として,エキソン4、6,9,17それぞれのサブタイプに対する点突然変異系統を確立し,そのホモ接合体で,異常となる神経回路を同定することを目指して、研究を行ってきた。昨年度、DSCAM遺伝子のN端Metの上流と下流に2つのP因子をもつ系統BL-12956を用いた交配で全DSCAMスプライシング産物欠損染色体を作製した。本年度は、EMSを用いた点突然変異剤によるDSCAM致死系統を作製し,相補性検定により致死系統の相補性群解析を行うとともに、MARCM法を用いた幼虫、成虫の神経走行異常を調べるべく解析を行った。2000系統を解析し、FRT,GFPを持たせた染色体上にDSCAM致死変異をもつ致死系統が4系統得られた。相補性検定の結果、いずれの組み合わせでも相補性を示さなかった。MARCM法により、幼虫、成虫における神経回路における変異を探索したが、明確な変異を同定できなかった。今後は、遺伝子ターゲティング等の手法を用いた効率的変異導入が必要と思われる。
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