研究課題/領域番号 |
16570063
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森下 文浩 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20210164)
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研究分担者 |
南方 宏之 (財)サントリー生物有機科学研究所, 部長研究員 (90150143)
古川 康雄 広島大学, 総合科学部, 教授 (40209169)
堀口 敏宏 独立行政法人国立環境研究所, 化学環境研究領域, 主任研究員 (30260186)
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キーワード | インポセックス / 有機スズ / 内分泌攪乱物質 / 神経ペプチド / 免疫組織化学 / 高速液体クロマトグラフィー |
研究概要 |
軟体動物前鰓類では、海水中の有機スズにより雌の雄性化が起こることが知られている(インポセックス)。このインポセックス現象は、有機スズにより神経ペプチド系に機能異常が生ずるために引き起こされると考えられるが、前鰓類の神経ペプチドに関する知見は少ない。本研究計画の初年度は、インポセックス現象が顕著に見られるイボニシをモデル動物として、その生殖活動の調節に関わる神経ペプチドの網羅的同定を行った。イボニシ組織抽出物を逆相カラムまたはイオン交換カラムを装着した高速液体クロマトグラフィー装置で分画し、他種動物で生殖活動の調節に関わることが知られている神経ペプチドに対する抗体を用いた免疫学的スクリーニング、またはイボニシ食道やアメフラシ生殖輸管に対する生理活性の有無を指標にしてスクリーニングを行った。その結果、40種近い生理活性物質を純化した。それらの物質をアミノ酸配列分析、質量分析にかけた結果、約20種がペプチドであることを明らかにした。その中には、FMRFamideなどの既知神経ペプチドだけでなく、数種の軟体動物では新奇とされるペプチドが含まれていた。例えば、環形動物のペニスの運動を調節するペプチド(LEP)に対する抗体を用いて、軟体動物から初めての同族体ペプチド(TEP)を同定した。TEPはイボニシのペニスに対しても興奮性作用を示す神経ペプチドであることを明らかにした(論文投稿中)。その他、多くのペプチドがペニスや生殖付属分泌腺に収縮増強または抑制活性を示し、これらが生殖関連器官の生理活性の調節に関わることが示唆された。次に、これらペプチドの組織分布を解析するツールとして特異抗体の作製を試みた。各ペプチドをヘモシアニンに化学架橋し、ラットに免疫して抗血清を得た。ELISA法による力価検定の結果、免疫染色その他の実験に十分使用できるものと思われる。次年度には、これらの抗体を用いてペプチドの組織分布や含有量の定量を行う予定である。
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