研究課題/領域番号 |
16570064
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤 義博 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (60037265)
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研究分担者 |
岡田 二郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (10284481)
山脇 兆史 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (80325498)
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キーワード | ハンミョウ / 視覚 / 単眼 / 幾何光学 / 角膜レンズ / 幼虫 / 側単眼 / 昆虫 |
研究概要 |
本研究は昆虫が対象物との距離を測る仕組みを明らかにすることを目的としている。複数の昆虫を対象としているが、今回はハンミョウの幼虫で得られた結果について報告する。従来の実験で、ハンミョウの幼虫が捕獲可能な距離内を動く対象物とそれより遠い位置にある対象物を視覚的に区別することを報告した。この距離の識別には頭部両側にある6対の単眼のうち、大きな2対が関わることを示してきた。幼虫は2対の単眼により100%の精度で距離を識別するが、1個の単眼でもある程度の識別が可能であることを示した。ヒトは対象物の絶対サイズを学習したり、レンズの厚みを調節することで、片眼でも距離を測ることが出来る。しかし、厚みがフヘンデ、かつ固定された角膜レンズの単眼しか持たない、幼虫が1個の眼で対象物までの距離を測ることはありえないと考えられた。著者はハンミョウ幼虫の単眼の構造に注目し、形態測定と光学測定を行った。最初に単眼レンズのサイズ(厚さと曲率半径等)とレンズから網膜までの距離を測定した。次に、摘出し角膜レンズにレーザー光を照射し、その光路を顕微鏡下で直接観察することで、焦点の位置を特定した。その結果、レンズの光軸に平行な光も、斜め30度からの光もほぼ同じ深さで結像することが確かめられた。その深さは眼の中心部で測定したレンズから網膜までの距離と一致した。レンズから網膜までの距離は眼の周辺部では中心部より20〜30μm大きいので、周辺部では近視眼である可能性が示唆された。しかし、対象物が接近すると、結像レベルは深くなるため、周辺部でも像が網膜上に形成される。これらの結果は、遠い対象物は網膜中心部で、近い対象物は網膜周辺部で正焦点像を形成することで遠近を識別する可能性を示唆している。さらに、切片観察で得られた形態学的パラメーターを厚いレンズの結像公式に代入し、光学測定の結果が妥当であることを確認した。
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