研究概要 |
今年度は,キイロショウジョウバエを用いて,1.PDF陰性ペースメーカーニューロン(LNd, DN)の微細構造の観察と生理活性物質の検索,2.PDF陽性ペースメーカーニューロン(PDF/LNv)の前大脳背側部における入力・出力シナプスの分布密度の解析,また,ルリキンバエを用いて3.三次元立体構築による副視髄の構造解析を行い,以下の新たな知見を得た。 1.PER抗体陽性のLNdおよびDNの細胞体には,少数の電子密度の高い有芯小胞(DCVs)が散在して観察され,神経ペプチドの産生が推測された。PER抗体とコレストキニン(CCK8)抗体を用いて二重免疫染色を行い,電顕観察を行ったが,CCK8抗体のDCVsへの特異的な反応は確認されなかった。グルタミン酸トランスポーターGAL4系統(301OK-Gal4/UAS-GFP)をPER抗体で免疫染色したところ,前大脳背側部のグルタミン酸トランスポーターを発現している細胞体で,PER抗体陽性の核が確認された。グルタミン酸を伝達物質とするDNが存在すると考えられる。 2.PDF陽性軸索の三次元構築を,昨年度のiACT背側部終末領域(T領域)に続いて,前大脳背側部を走行する軸索の中央域(M領域)で行い,入力・出力シナプスの分布密度を求めた。T領域では,出力シナプス密度が0.34/μm^2,入力シナプス密度が0.08μm^2であった。M領域では,前者の密度が0.30/μm^2,後者が0.03μm^2であった。 3.ルリキンバエの副視髄には,Pt-eyeletシナプスボタンのシナプス後要素として,シナプスボタンに向かって微細突起をのばしシナプス入力を受けるタイプの神経繊維と,シナプスボタンに広い面で密着し,密着部の細胞膜の一部がシナプス後要素として入力をうけるタイプの神経繊維が観察された。これらの神経繊維の由来の特定は今後の課題である。
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