研究概要 |
短い記載文を伴って発表されたキクトサカは,葉緑体にコードされているrbcL遺伝子の塩基配列を用いて系統解析を行った結果,葡匐性藻体をもつことで類似しているが,実際には異なった2種を含んでいることが明らかになった。これら2種は九州南岸から伊豆七島にかけて分布し,八丈島では同じ生育帯に近接して存在する場合もあり,外部形態を注意深く観察することでフィールドにおいて識別可能である。選定基準標本に一致する真のキクトサカ(Meristotheca coacta Okamura)の葉状体は不規則な裂片に分かれ,各節はさまざまな形を示し,二次的葉状体を欠くのに対して(論文は印刷中),別の種の葉状体は規則的に叉状分枝し,各節は線形で,強く重なりあい,二次的葉状体を末端節のいくつかから形成する。両者はまた四分胞子嚢とその親細胞との壁孔連絡の位置においても決定的に異なる。キクトサカの四分胞子嚢は終始その側面において親細胞と壁孔連絡するのに対して,別の種の四分胞子嚢は最初その基部において親細胞と壁孔連絡するが,若い四分胞子嚢が藻体内部に向かって伸長成長するために,成熟した四分胞子嚢はその側面において親細胞と壁孔連絡するようになる(すなわち、四分胞子嚢と親細胞との壁孔連絡の位置が前者の成長に伴って変化する)。後者の例は,同じミリン科のキリンサイ属の1種で知られているが.トサカノリ属では初めての報告である。別の種を新種カサナリトサカ(Meristotheca imbricata Faye et Masuda)として記載し,論文原稿を作成した(投稿中)。
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