研究概要 |
カナダ、エドモントン市近郊のアスペン林及びロッジポールマツ林内の尿素施与地を2003年9月に調査して、土壌の理化学分析のため、1000g尿素/m^2処理区、200g尿素/m^2処理区、0g尿素/m^2処理区(対照区)からL-F層とH-A層の土壌を採取した。また、腐生性及び菌根性アンモニア菌の採集を試みた。アスペン林及びロッジポールマツ林共に多数のCoprinus spp.の発生を確認したが、菌根性アンモニア菌を発見することはできなかった。現地で分離培養して持ち帰ったCoprinus spp.菌株について、ITS rDNAの塩基配列の解析を行なった結果、カナダの尿素処理区で採集したCoprinus spp.は、C.cinereus sensu lato, C.echinosporus complex, C.phlyctidosporus complexであることが明らかになった。 以上の結果から、C.cinereus sensu lato北半球から南半球まで極めて広い分布域をもつ広布種であること、C.echinosporus complex, C.phlyctidosporus complexはいずれも北半球に広く分布する広布種であることが判明した。 実験地では、日本での実験結果と異なり、遷移前期のアンモニア菌は、尿素処理後2年間に渡って発生し続けること、pHは尿素処理以前の値に戻ったものの、処理後3年たってもアンモニア態窒素濃度は1000g尿素/m^2処理区と200g尿素/m^2処理区で対照区よりも高い値を示すこと、硝酸態窒素濃度は1000g尿素/m^2処理区において対照区よりも高い値を示すことが判明した。さらに、L-F層の土壌(リター)の方がH-A層の土壌よりアンモニア態窒素濃度と硝酸態窒素濃度の低下が遅いことも判明した。
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