研究概要 |
中国山地では,ヒコナミザトウムシ(以下ヒコナミ)Nelima nigricoxa(2n=16/18/20),アカサビザトウムシGagrellula ferruginea(2n=12〜24),イラカザトウムシ(以下イラカ)Gagrellopsis nodulifera(2n=16〜24),ヒライワスベザトウムシLeiobunum hiraiwai(2n=18〜20)など多くのザトウムシ類で外部形態や染色体数の著しい地理的分化が生じている(鶴崎2003)。 本年は前年の調査であきらかになった隠岐諸島のユミヒゲザトウムシ種群の種(♀しかえられなかったため種名未決定)の追加調査をおこない,これが九州以南にしられるヒロスベザトウムシL.hikocolaであることを確認し,染色体プレパラートも作成した。本種は島後のみでなく,今回,西ノ島でも確認された。また,これまでの結果に基づき,論文1編を作成した。また,島根県本土のザトウムシの地理的分化についても論文を作成した。 中国山地で外部形態色斑が多様化するアカサビザトウムシについては鳥取県東部の佐治谷にそう色斑のクラインを詳細に調査した。佐治川をはさんで北側と南側では色斑のクラインにずれが生じていること,また,標高によって漸次的に変異する歩脚長や体長のクラインにも佐治川をはさむ両岸で差異があることがわかった。 これまで未着手であった,モエギザトウムシの全国的な外部形態変異を調査した。歩脚長は緯度や標高に有意な負の相関をしめしたが,体長でのそれは歩脚長ほどはっきりしなかった。 中国山地ではほぼ日野川・旭川のラインで九州広島型と近畿型という2つの地理型(これらは♂の生殖器と上唇の形態,および染色体数で異なる)の分布交替のおこるヒライワスベザトウムシについて,全国的な地理的分化を解析した論文をまとめ,1編を投稿中である。
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