1.ゴカイ科の汽水産普通種について検討を進め、最も重要な普通種であるカワゴカイ属3種の分類(同定の手引きとなる検索表を含む)、生活史、国内での分布などについて、これまでの知見の総まとめとなる総説論文を和文誌「化石」に発表した。 2.有明海沿岸の大牟田川河口干潟において、5科11種の多毛類の生息を確認し、各種の分布特性を明らかにした(論文準備中)。 3.大牟田川では、年間を通した大潮時夜間満潮時の定期調査によって、同所的に生息するゴカイ科4種の生殖群泳を確認し、それらの空間・時間的な分離について検討した(Zoological Science誌に論文掲載)。生殖群泳の時期と場所が大きく重複する近縁2種(アリアケカワゴカイとヤマトカワゴカイ)については、両種の混成比、体サイズ組成、性比などについて詳しく比較した。さらに、実験室内での交雑実験により、2種間での配偶子和合性と幼体生存率を調べ、野外での生殖隔離機構について考察した(Marine Biology誌に論文掲載)。 4.1997年と2002年に有明海全域(約90定点)で採集された多毛類標本の検討を行い、それぞれ42科と46科に分類した。多くの未記載種または日本未記録種が含まれていると思われる(今後も研究継続の予定)。 5.チロリ科について、日本各地の干潟・浅海域から採集された約700個体を検討し、2属15種を確認し、その分布状況を明らかにした。このうち有明海で採集された1種は未記載種である可能性が高く、また沖縄で採集された1種は日本未記録種であった(論文準備中)。 6.伊勢湾沿岸の藤前干潟において、11科16種の多毛類の分布を確認した(論文準備中)。
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