研究概要 |
1.藻類共生性ホヤの分布調査 我が国における藻類共生性ホヤの分布を把握するため、これまで琉球列島をフィールドに調査を進めて来たが、今年度はもう一つの亜熱帯である小笠原諸島の父島においても調査を行った(4日間5地点)。父島より確認された共生性ホヤはDiplosoma simile, Lissoclinum punctatum, Trididemnum cyclops, Trididemnum sp. (Cf. T. clinides)の4種で、八重山諸島の15種、同様な緯度に位置する奄美大島の10種と比較しても格段に少ない。特に、琉球列島に広く分布し出現頻度の高いチャツボボヤやシトネボヤが皆無であったことは、小笠原のホヤ相を特徴づけている。比較的大陸に近く弧状に連なる琉球列島とは異なり、海洋島である小笠原諸島では他の場所からの加入が極めて困難であるため、種数が限定されているのと考えられる。同時に。今回確認された4種は分散力が極めて高いと推定される。分布情報は順次論文発表を進める予定である。 2.共生性ホヤの有性生殖時期の特定と共生藻の垂直伝播様式 低緯度域では一年を通じて有性生殖を行なうことが数種の共生ホヤで報告されているが、我々は亜熱帯に位置する沖縄では有性生殖が夏季に限定されていることをDiplosoma virensで明らかにした。今回、Lissoclinum bistratumとTrididemnum cyclopsについて毎月サンプリングを一年間行ない、この2種についても有性生殖がほぼ夏期に限定していることを明らかにした。さらに組織学的な検討の結果、群体の皮の中で共生藻と隔離されて発生した胚が、幼生としてふ化する際に胴部表面に親群体の共生藻を粘着により獲得していることが明らかになった。現在、チャツボボヤについても同様な調査を進めている。
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