1.藻類共生性ホヤの分布調査 我が国における藻類共生性ホヤの分布を把握するため、これまで琉球列島をフィールドに調査を進めて来たが、今年度は琉球列島北端に位置する種子島で採集調査を行った。以前、種子島・屋久島で行なっていた予備調査の結果を含め、種子島・屋久島より確認された共生性ホヤはLissoclinum bistratum(屋久島のみ)、Diplosoma simile、Diplosoma virens、Diplosoma sp.(未記載種)の4種で、八重山諸島の15種、奄美大島・中之島(トカラ列島)の10種と比較しても格段に少なく、トカラ列島と薩南諸島の間に多くの種の北限があると予想される。 2.共生性ホヤの有性生殖時期の特定 共生性ミスジウスボヤ属(the genus Trididemnum)3種がほぼ同所的に分布する沖縄島備瀬崎の藻場において、毎月サンプリングを13-14ヶ月間行ない、この3種についても有性生殖が冬季に認められい季節性があることを明らかにした。また、有性生殖のピークや期間は種間で多少の違いが認められた。この有性生殖の季節性は水温が主たる要因となっているようであるが、2005年9月と2006年9月の比較から、降雨が極端に多い場合に有性生殖が抑制される傾向があることが考えられる。 3.Diplosoma midoriの分類学的検討 Diplosoma midoriの模式産地である宝島、原記載で分布の報告されている中之島の共生性Diplosomaの標本を検討し、D. midoriをD. simileまたはD. virensは新参シノニムであると結論した。
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