マメ科のジャケツイバラ亜科とネムノキ亜科で特異的にみられるareole模様や斑点模様に着目し、これらの組織構造、機能および系統発生を解析した。 1.両亜科に属する計19属67種で種皮の解剖学的解析を行い、以下の知見を得た。 (1)areole模様の輪郭をなすpleurogramに亀裂型と非亀裂型の2タイプが認められ、ジャケツイバラ亜科では両タイプが、一方、ネムノキ亜科では亀裂型のみが認められた。 (2)亀裂型pleurogramでは模様に特異的な組織学的性質は認められず、一方、非亀裂型pleurogramや斑点をもつ種子では、模様の内外の細胞でセルロース繊維の配向や層構造に違いが認められた。 (3)ジャケツイバラ亜科の亀裂型pleurogramは、分子系統学的にネムノキ亜科に最も近縁なBurkea属とDimorphandra属(Dimorphandra group)でみられ、系統発生を反映している。 (4)種子表面にみられる亀裂構造(fracture line)には、亀裂の深さで2タイプが認められた。非亀裂型pleurogramや斑点をもつ種子では、両タイプの亀裂が異なる位置に見られる。 (5)近縁なCassia属、Senna属、Chamaecrista属では、種子表面模様は異なるが、種皮には構造的な関連が認められた。 2.ネムノキ属(亀裂型pleurogram)、Senna属(非亀裂型pleurogram)およびChamaecrista属(斑点模様)を用いた吸水試験により、(1)亀裂型pleurogramは吸水機能を全くもたないこと、(2)非亀裂型pleurogramと斑点模様は種皮外層の膨潤には関与するが、吸水には直接関与しないことが判明した。 得られた以上の知見については、日本植物分類学会第4回大会(平成17年3月)および第17回国際植物学会議(平成17年7月)で発表した。
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