研究概要 |
細胞質タンパクの多くのものは機能不明のシステイン残基をもつ。細胞質の脂肪酸結合タンパク(FABP)におけるジスルフィド結合の生化学的機能を明らかにするため、以下の実験をおこなった。前年度のラット上皮FABPとゼブラフィッシュ肝FABPの2種類の他,センチュウ(C.elegans)における9種類のFABPホモログ(FAB1〜FAB9)について組換えタンパク質を調製をこころみた。特にセンチュウのFABPはシグナル配列をもつ分泌型のFAB1〜FAB4と細胞質タンパクであるFAB5〜FAB9の二系統をもつ点,また複数のシステイン残基をもつものや全くもたないものもあり,ジスルフィド形成の機能を解析するには,好適な材料であるといえる。RT-PCRによりセンチュウの全RNAから目的のcDNA9種類を増幅することができた。これを発現ベクターに入れ,BL21に形質転換させて,発現を誘導した。大量培養とゲルろ過により9種類のFABPを精製することができた。それぞれのタンパクはCD(円偏光二色性)スペクトルにより,β構造の多いネイティブな立体構造をもつことを確認した。数が多いことと,発現量が少ないため大量培養を繰り返す必要があったため,年度内には十分な解析は出来なかったが,9種類の組換えタンパクの合成ができたので,引き続き次年度にジスルフィド形成とタンパク機能の関連を明らかにする予定である。また実際にin vivoでの酸化ストレス時にこの様なジスルフィド結合が形成されるか,いわゆる酸化還元プロテオーム解析の手法で明らかにしたい.
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