研究課題
基盤研究(C)
Helicobacter pyloriは胃潰瘍の原因菌と考えられており、胃癌との関連性も指摘されている。H.pyloriがどのように胃潰瘍を引き起こすかは依然不明であるが、胃粘膜上皮への菌の接着とコロニーの形成が胃潰瘍発症の最も初期で重要な段階であるとされている。多くの研究からH.pyloriのレセプター分子のひとつとして胃粘膜上皮上に発現している糖鎖が有力視されているが、いまだにどのような糖鎖が実際のレセプターとして働いているかは明らかとはなっていない。本研究では、H.pyloriのレセプターとなりうる分子を検索し、その接着機能性糖鎖を解明することを目的としている。また最近、細胞膜のミクロドメインが細胞膜上の情報伝達のシナプスとして重要視されるようになってきた。そこで本年度は、培養胃がん細胞株KATOIIIのミクロドメインが当該バクテリアの接着に寄与しているかを検討した。胃がん細胞株KATOIIIを、界面活性剤トリトンX-100を含む緩衝液でホモジナイズし、常法であるショ糖密度勾配遠心により低密度画分に回収されるミクロドメインを得た。各画分へのバクテリアの接着を検討したところ、低密度画分に対して強い接着性を示した。そこで、まずミクロドメインに含まれる糖脂質に対する接着性を検討することとした。ミクロドメインより脂質成分を抽出し、イオン交換クロマトグラフィーにより酸性および中性の糖脂質に分画し、それぞれに対する接着性を検討したところ、中性糖脂質画分に対して強い接着性を示した。そこで、ミクロドメイン中の機能性糖脂質を同定するとともに、ミクロドメインとバクテリアとの接着による情報伝達系について詳細に検討した。中性糖脂質画分をHPLCで分離後各フラクションの糖脂質をTLCおよび質量分析計で解析するとともに各フラクションに対するバクテリアの接着性を検討した。その結果、最も高い接着性を示した画分には糖脂質は含まれていなかった。
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