研究概要 |
ショウジョウバエの遺伝子中にヒトヘムオキシゲナーゼ(HO)と相同性が高い塩基配列があるので、これをPCRで増幅し、次いで大腸菌の発現ベクターに組み込み発現させた。精製した発現蛋白質は当量のヘムを結合し、そのヘムを酸素分子と電子の存在下にビリベルジン、CO,鉄イオンとに分解した。興味深い事に、他のHOと違ってヘムの第五配位座は空であった。また、ビリベルジンのα特異性は失われていた。 藍草のho2遺伝子の産物であるHO-2はヘム分解活性を持たないと報告されていた。これに疑問を持ち、先ず。大腸菌での発現系と精製法を確立した。精製酵素は確かにヘムを酸素分子と電子の存在下にαビリベルジン、CO,鉄イオンとに分解した。従来の報告を訂正した事になる。 高等植物のHOの蛋白科学的報告は少ない。それを調べるため、大豆のHO-1の大腸菌での発現系と精製法を確立した。大豆のHO-1と他のHOとのアミノ酸レベルでの相同性は20-30%と低いにもかかわらず、精製酵素は当量のヘムを結合し、その光吸収像はヒトHOのものと同様のスペクトルを示した。また、結合したヘムを酸素分子と電子の存在下にαビリベルジン、CO,鉄イオンとに分解した。電子供与体としてはMADPH/ferredoxin reductase/ferredoxinが有効であった。 ジフテリア菌のHOであるHmu0の酸素化型の結晶を作成し、X線解析を行った以前、我々が共鳴ラマン解析で得たように、ヘム鉄に結合した酸素分子は110度と強く屈曲していた。また、遠位酸素原子がヘムのαメテン炭素に向かっている事がこのX線解析で初めて明らかになった。 ベルドヘムの分解には酸素分子の他にパーオキシドも有効である事を初めて明らかにし反応機構を提示した。
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