細胞内で産生・蓄積される活性酸素種は主要な酸化ストレス源として遺伝子やタンパク質および脂質などの生体分子を酸化することにより、癌化や老化、動脈硬化症などの生活習慣病の主たる原因となっている。骨粗霧症を始めとする骨代謝疾患についても、骨髄内に発生・蓄積する活性酸素種(ROS)による破骨細胞の増加と活性化が一因となって発症することが考えられる。本研究は、この活性酸素による細胞応答メカニズム、特に骨吸収促進作用に着目し、プロスタグランジンを介した破骨細胞の分化、細胞死および骨吸収に対する酸化ストレスの新規生理作用と作用メカニズムの解明を目的とした。 本研究の結果、骨吸収に関わる破骨細胞(RAW264)の分化と機能性がH202の濃度依存的に誘導されることが明らかになり、低濃度のH2O2により破骨細胞の分化の促進が促進され、TRAP陽性の多核細胞の形成が誘導された。この効果は、H202の還元剤として知られるNACの添加により抑制された。上記の酸化ストレス刺激よりH2O2の濃度依存的にシクロオキシゲナーゼ(COX)およびプロスタグランジン受容体の遺伝子発現が変化したことから、H2O2による刺激はプロスタグランジンの産生を介して誘導されることが示唆された。さらに抗酸化ポリフェノール(Reasveratrol、EGCG)の添加により破骨細胞の分化・機能性が抑制されることが判明した。また高濃度のH2O2刺激により、H2O2の濃度依存的にフォークヘッド型転写因子(FOXO)の発現が誘導され、同時に破骨細胞のアポトーシスが誘導されることが明らかになった。 以上の結果から、酸化ストレスがプロスタグランジンを介した破骨細胞の分化、機能性の調節および破骨細胞のアポトーシスに深く関与することが判明し、骨代謝に対する活性酸素および抗酸化物質の生理作用と作用メカニズムの一端が明らかになった。
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