研究課題
基盤研究(C)
ブフネラのゲノム情報にもとづき、アブラムシの菌細胞内共生系におけるタンパク質輸送機構を分子生物学的・細胞生物学的側面から解析し以下の成果を得た。1.ゲノム上の鞭毛関連遺伝子(26種類)は擬似遺伝子ではなく、全てが活発に転写・翻訳されていることを見出した。更に、電子顕微鏡観察によりブフネラ表層は1,000を超える鞭毛フック・基部複合体様構造(HBB)で埋め尽くされていることを見出すとともに、当該構造がブフネラにおけるタンパク質輸送装置として機能しうる可能性を示唆した。今後、当該遺伝子群・タンパク質群の発現と宿主昆虫の発生段階あるいはモルフとの関連も解析していく予定である。2.本課題を遂行中、最終脱皮直後の有翅虫において菌細胞あたりのブフネラ数が一過的に激減すること、また、無翅虫のブフネラとはヘマトキシリン染色像が全く異なることを見出し、有翅・無翅虫ブフネラのDNAの存在様式に差異がある可能性が示唆され、予期せぬ発見に繋がった。3.HBBがタンパク質輸送装置として機能しうる可能性を立証するための予備実験として、単離ブフネラを蛍光標識物質とインキュベートし共焦点顕微鏡観察によりブフネラへの移入を確認できたことから、タンパク質移入のin vivo Assay系の構築に成功したと評価した。今後、本Assay系を用いてHBBを介した宿主タンパクの移入を実証する。4.プロテオーム解析を通し、宿主菌細胞からブフネラへ移入されたと思われるタンパク質を数種同定した。これらのタンパク質に共通した「ブフネラ移行シグナル」が存在するか否の推定は本研究の最重要課題であったが、アブラムシゲノムプロジェクトが未完結のため延期せざるを得なかった。以上、本研究で得られた成果は、これまで全く未知であった細胞内共生系におけるタンパク質輸送機構の解明、ひいては、共生系維持機構の解明に繋がることが期待される。
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